このシナリオはナイトシティを舞台としており、３〜６人程度のキャラクターでプレイするように作られている。ロールの種類は問わないが、最低２名のソロ、そしてメドテッキーがＰＣに含まれていると好ましい。フィクサー、テッキー、ネットランナーなどが参加すれば、余計なトラブルを避けられる。
これはアラサカ一族や“鋼鉄の龍”と深い関わりがあるシナリオだ。セッションに必要な情報はすべてシナリオに含まれているが、『ニッポンソースブック』を参照すると、背景に関する理解が深まるだろう。
ＮＰＣの幾人かは、デュアル・ロール・システムで作成されており、特殊技能を２種類持っている。セッションを行う分には必要ないが、興味のある方は『クリオタンク０℃』を参照されたい。
なおシナリオ中の成功判定は「〈使用技能名〉難易度」と表記する。
関連ファイル
荒坂家の次男、頼宣は、父の野望を知ったその時から反逆者となった。狂気の計画を阻止するため、“鋼鉄の龍”を組織してアラサカに挑み続けたのだ。
それから４年。頼宣は４名の部下を連れてナイトシティを訪れた。目的は、アラサカと敵対するギャングの指導者と会談し、同盟を結ぶこと。しかしその情報はアラサカに漏れ、会談中にブラック・オペレーション・チームの攻撃を受けた。ギャングはほぼ壊滅、鋼鉄の龍も３名が死亡、頼宣も致命傷を負ってトラウマ・チームに回収されてしまう。カードの登録は偽名で行われているものの、アラサカの目を眩ませることはできない。トラウマ・チームも立場上、治療中の重体患者を引き渡すことはできないが、退院と同時にアラサカの手に落ちるのは確実だろう。
ただ一人逃げおおせた鋼鉄の龍のメンバー、カズミは、頼宣の奪回作戦を計画した。頼宣が回復し、アラサカの手に渡る前に、トラウマ病棟から運び出してアメリカを脱出させるのだ。そのためには地元に明るく、腕の良いエッジランナーたちが必要になる……
このシナリオは、ＰＣがカズミの依頼を受けるところから始まる。ＰＣの中にフィクサーがいれば、仲介者を経てカズミが彼（彼女）に接触してくる。ＰＣにフィクサーがいなければ、カズミの接触したＮＰＣのフィクサーがＰＣたちに仕事を持ちかける。これまでに適当なフィクサーを設定していないなら、“ソルティ・ドッグ”を使うといい。
いずれの場合も、ＰＣたちが興味を示したなら、その日の19：00に、ウィリアムズ＆32にあるクラブ《バニーズ＆バローズ》の個室で依頼主と会うよう指示を受ける。
カズミは部屋を予約して、30分ほど前からＰＣたちを待っている。茶色い瞳と栗色の髪を持った、20代前半の精悍な美女で、東洋人と白人の両方の血が入っているように見える
ソルティ・ドッグが仲介を行ったなら、彼も同席する。カズミはＰＣたちに飲み物を勧め、オーダーが届いた段階で仕事の話に入る。
「単刀直入に行くわ。かなりヤバい“引き抜き”で、期限は３日。報酬は前金で10,000、あとで50,000。必要経費は考慮するわ。ターゲットのまわりに大した兵力はいないけど、へまをやればメガコープが敵にまわる。だから、腕に自信のないヤツは帰ってちょうだい」
カズミはＰＣたちに挑戦的な視線を投げかける。ここで断わって帰ればシナリオはおしまいだ。やる気を見せるなら、カズミはもっと細かい内容を話し始める。
「とある男が、トラウマ・チームの新しい救急病棟に収容されているの。日本人で、名前は佐竹芳雄。彼はアラサカとトラブルを起こしていて、そのまま退院すれば連中に捕まってしまう。トラウマ・チームも立場上、重体患者を動かすようなことはしないし、アラサカも彼を生きたまま欲しがっているから……受け渡しは４、５日先になるはず。その前に彼を連れ出して、とある場所……シティから車で１時間くらい走った小さな空港なんだけど、そこまで脱出させて欲しいの……」
カズミがＰＣに与える情報は以下のとおり。
◯新病棟はファーレン・ストリートと32番ストリートの交差点、北東のブロックの角に建っている。
◯救急病棟の見取図。
◯佐竹の病室（見取図を参照）。
◯新病棟は患者の急増に対応して先月開設されたばかりのものである。オフィスに使用されていたビルを買い取り、大急ぎで改造したため、多少奇妙な構造をしている。
◯入院しているのは全員、重傷で、かつ高額の入院費用を支払える者たちばかりだ。
◯一般外来は扱っておらず、この病棟を退院した患者へのフォロー（投薬、検診等）のみを行っている。病棟ができて間もないため、事実上、通院患者は存在しない。
◯屋上にはＡＶポートがあり、不定期に患者を乗せたＡＶが発着する。
◯ＡＶが発着することもあり、隣のビルとの間隔は広くとられている（もっとも近い位置で15ｍ）。
◯アラサカは“新築祝のサービス”で18名の警備員を送り込んでいる。彼らの装備は（通常の）ミナミ10ではなく、5.56mmのＷＡＡアサルト・ライフルである。
◯何か起れば警備員たちは、警備ブースの専用回線（通常のネットからは切り離されている）を使用してアラサカ・タワーに応援を求めるだろう。そうなれば、数分以内に兵士を満載したＡＶ−４が飛んでくるはずだ。
◯佐竹はかなりの重傷を負っており、脱出のさいにはメドテクや〈応急処置〉に長けたものの付き添いが必要である。
◯シティから１時間ほど走った郊外の飛行場に、逃走用のステルス・ジェット機が待機しており、そこまでたどり着けば、即座に佐竹を乗せて発進することができる。
カズミは決して、鋼鉄の龍や頼宣の名前を口にしようとはしない。佐竹（頼宣）や自分自身の素性については、知らないほうがＰＣたちのためだといってはぐらかす。
報酬はＰＣ全員に対する合計金額だ。危険な仕事ではあるものの、十二分な金額が提示されている。交渉次第では前金を20,000まで引き上げることができるが、合計金額の増額は難しい。（細かい点はレフリーの判断にまかせる）
作戦遂行の期限までには、まる２日の猶予がある。装備や情報を集め、じっくりと作戦を練ってことに当たるべきだろう。焦って行動すれば、無残に屍をさらすことになる。
カズミは腕に覚えがあり、基本的に病院に潜入するメンバーと行動を共にしたがる（頼宣が心配なのだ）。“ソルティ・ドッグ”は装備の入手の仲介は行ってくれるが、直接情報収集をしたり、現場につきあったりはしてくれない。
襲撃の作戦を立てることも重要だが、逃走経路の確保も忘れてはならない。空港までたどり着けなければ何の意味もないからだ。ＰＣたちが攻撃にばかり気をとられているようなら、カズミを使ってその点をさりげなく指摘してやること（シビアにいきたいというなら黙っていてもいいが……）。
★情報収集
情報は多く集めておくに限る。以下に代表的なアプローチをいくつか上げておこう。
●ネット
トラウマ・チームの新病棟は独自のデータ・フォートレスを持っている。トラウマ・チームのロゴをかたどった小ぶりな赤いビルディングだ。
ネット空間を偵察すれば、データ・フォートレスの四方に１名ずつ、アラサカのネット・ランナーが立っているのがわかる。アラサカ・クローバーをつけたクロームの人型は、これみよがしにシールドとデーモンをまとい、近くを通るネットランナーたちを睨みつけている。長時間うろついていると、不審に思われるので気をつけたほうがよい。（ネット・ガードマンのデータはここを参照）
実際に侵入を試みるなら、データ・フォートレスの項を参照しろ。もちろん、その前に４人のガードマンをどうにかしなければならないのだが。
●データターム
データタームで新病棟について調べても、カズミが知っている以上のことは判明しない。悪しからず。
●現地偵察
直接下見を行うという手もある。ビルの周囲をぶらつけば、入り口近くに警備ブースがあり、常時４名の警備員が詰めているということがわかる。一般外来は受け付けていないため、時折、入院患者の見舞いが訪れる程度で、来客は少ない。
１階のロビーまでなら自由に入ることができる。ただし、前述の通り外来は受け付けていないため、入院患者への見舞い客以外は、不審の目で見られる。うまくごまかさなければ、警備員とトラブルを起す羽目になるだろう。あたりまえの話だが、佐竹の名を出そうものなら警備員たちは全力でそのキャラクターを捕えようとする。“黒服の兄ちゃんたち”には買収も口車も通用しない。
裏に回れば、トラック用の搬入口があることも判明する
その他、詳しい点に関しては“トラウマ・チーム・ナイトシティ・新救急病棟”を参照のこと。
●その他
病院について漫然と調べるだけでは限界がある。レフリーとしても、何を教えていいやら迷ってしまうだろう。突破口を得たいなら、ターゲットを絞って情報収集を行うべきだ。たとえば、「何か紛れこんで侵入する手段はないだろうか？→病院なら洗濯物を業者に委託しているに違いない→委託を受けている業者を調べる」といった具合だ。こういった発想法をＰＣたちに示唆するかどうかは、各レフリーの判断にお任せする。
●その手はないぜ、チューマ！
佐竹の名前を（気心の知れた仲間以外に）出して調査をしたり、大っぴらにアラサカについてかぎ回ったりすれば、余計なトラブルを増やす危険がある。アラサカ側も、この重要事件に関してそれなりの監視網を広げているからだ。このような場合には、レフリーの判断でちょっとした警告を与えてやるといい。たとえば、情報提供者を偽ってアラサカのエージェントが襲ってくるとか（能力値や技能は警備員のものを使用して、目立たないアーマーと、拳銃やＳＭＧを持たせろ）、病院の警備員が倍になったりといった具合だ。ヤバイ仕事は、内緒でやらなくちゃな。
★装備の購入
装備は基本的に自分の金で購入せねばならない（前金はもらったろ？）。個人の装備以外（たとえば逃走用の車）などに関しては、必要性と妥当性を認めれば、カズミが資金を提供してくれる。レフリーの判断で交渉に応じること（カズミの懐ぐあいについては、ＮＰＣの項を参照）。
購入性が“難”や“希”の物品に関しては、手に入れるために技能判定が必要となる。ＰＣかソルティ・ドッグに〈裏情報〉、または〈裏取引〉で判定させること。難易度は下記のとおり。
難 〈裏情報〉30 ……〈裏取引〉20
希 〈裏情報〉40 ……〈裏取引〉30
上記は当日中に手に入れようとした場合。納入に１日猶予ができるごとに、難易度は３下がる。また、定価以上の購入金額を提示するなら、＋50％ごとに難易度が１下がる。
★追加メンバーの雇用
計画を練っているうちに、メドテク、テッキー、ネットランナーといった専門技術の持ち主を雇う必要性が出てくるかもしれない。また、誰かに金を払って逃走の手助けをさせたり（特定の場所に車を持ってこさせるとか）、病院関係者を買収したりといったことも考えられる。フル・タイムで作戦に参加させるなら、その人物は今回のチームのメンバーとして、報酬から分け前を受け取る（つまり、ＰＣたちの分け前が減るということだ）。ちょっとした仕事をさせるために金をつかませるだけなら、基本的にカズミが資金を提供してくれる。
専門家を探す場合、以下に設定した難易度で〈裏情報〉、または〈裏取引〉の技能判定を行え。失敗すれば、適当な人材が見つからなかった（あるいは仕事を断わられた）ということだ。ギャングやノーマッドがいるなら、特殊技能のルールを使用して自分の組織のメンバーを呼び寄せることはできる（どんなメンバーがいるのかはレフリーが判断すること）。
駆け出し（２〜３）……〈裏情報〉20 〈裏取引〉10
ミドル・クラス（４〜５）……〈裏情報〉25 〈裏取引〉15
プロフェッショナル（６〜７）……〈裏情報〉30 〈裏取引〉20
トップ・レベル（８〜）……〈裏情報〉35 〈裏取引〉25
上記は短い時間で済む仕事を頼もうとした場合。作戦全体に参加してくれる人物を探すなら、難易度に＋10しろ。まる１日人探しに専念するなら、難易度は−５される。
★病院の人間を買収する
有効な作戦の一つだが、事前に発覚する可能性を考えるとリスクが大きい。買収を試みる際は、適当な金額を提示した上で以下にしたがって〈説得／口車〉の技能判定を行うこと。相手が買収されたふりだけして密告する場合もあるので、レフリーが密かに判定を行うのが望ましい。
| アラサカ・ガードマン | 事務局員／看護婦 | 医師 | |
| ちょっとした情報（患者の具合など）を聞き出す | 不可能 | 100eb、〈説得／口車〉15 | 200eb、〈説得／口車〉20 |
| 機密情報（警備体制など）を聞き出す | 不可能 | 1,000eb、〈説得／口車〉20 | 2000eb、〈説得／口車〉25 |
| 手引きを頼む | 不可能 | 5,000eb、〈説得／口車〉 | 10,000eb、〈説得／口車〉30 |
上記の金額は買収のための相場である。提示額が相場を割ったなら、−５％ごとに難易度が＋１される。逆に提示額が多いなら、＋50％ごとに難易度を−１すること。
アラサカのガードマンは、買収されかけたなら確実にその場で相手を捕まえようとし、失敗しても上司に報告を行う。病院の職員は、買収に心を動かさなかった場合、25％の確率で買収されたふりを装い、密告を行う。そうでなかった場合も、当然上司やアラサカに報告は行われ、それなりの対応がとられる（ＰＣが襲われたり、警備員が倍になったり……）。
★その他
逃走用のヴィークルを用意したり、周辺の道路の確認をしたりと、やっておくべきことはいくらでもあるだろう。取りうる対策をすべてを列記するには紙面が足りないので、細かい処理についてはレフリーの判断にまかせる。
作戦に必要な情報の他に、依頼人に関する情報や事件の背景を調べようとするＰＣもいるだろう。
スクリームシートを調べれば、以下の記事を発見できる。３日前、オールド・ダウンタウンにあるブースターギャング“グレイヴヤーズ”の本拠が、謎の集団の攻撃を受け、壊滅した。死者は無関係な住民を含めて24名。その際、佐竹芳雄という日本人が巻き込まれてトラウマ・チームに救助されている。
〈裏取引〉５か〈裏情報〉15に成功すれば、グレイヴヤーズがここ１年ほど、アラサカとのトラブルを繰り返していたということがわかる。さらに〈裏取引〉15か〈裏情報〉25に成功すれば、ここ数日、アラサカと確執があった複数のギャングの幹部が姿を消しているということがわかる（ようするに、死んじまったってことだ）。この先を辿ろうとしても、３日や４日ではどうしようもない。
侵入方法
アラサカから援軍が来ることを考えれば、なるべく密かに潜入する方が望ましい。だが、そのためのアプローチは無限にあり、すべてを書き記すには紙面が足りない。
プレイヤーが面白い手段を思いついたなら、極力アドリヴで対応してやったほうがいいだろう。シナリオに記載された情報にこだわる必要はない。いつ、どこから、どうやって、何を利用して侵入するのか。プレイヤーたちにできるだけ頭を絞ってもらうのだ。
見取図についてはこのリンクを参照のこと。隣のビルとの間隔は約15ｍ。窓はすべて入れ込み式の防弾ポリマー（ＳＰ20）だ。ＲＥＯミートワゴンとの抗争は耐えないし、ナイトシティで窓を空けてもさわやかな空気は入ってこないからな。
非常階段は地上から１階までを繋ぐ螺旋階段だが、各階の扉には電子ロックがかかっている（警報を鳴らさずに開けようとするなら〈電子保安機器〉20が必要）。もちろん、内側からは手動で開けられるようになっているが。
病棟には18名（ＰＣたちが途中でへまをやっていたなら36名）の警備員と、１名の女ソロがいる。ＰＣにとって幸いなことに、彼らは頼宣を殺す権限を与えられていない。そのため、頼宣を巻き込む恐れがあるような攻撃（たとえば、爆発物の使用や無差別な制圧射撃）は行うことができない。
★１Ｆ
１Ｆにはロビーと受付、売店、警備ブースなどがある。基本的に外来患者は受け付けていないため、ときおり見舞い客が訪れる程度で人の出入りは少ない。
正面玄関にはアラサカ・スキャンウェイのデラックス版が設置してあり、ブースの警備員たちが来院者を監視してる。武器や危険な薬物を忍ばせていれば、即座に攻撃体制に入る（サイバー・ウェポンも発見される）。サイバー・リムを移植していれば、警備員が近づいてきて内蔵火器などの検査を行う。
警備ブースは防弾透明ポリマー製（ＳＰ20）で、ロビーに面した側にシュテルンマイアＭ−５Ａ分隊支援火器が設置されている（ＨＶＹ・−１・Ｎ・希・６Ｄ６＋２ＡＰ（7.62mmＡＰ弾）・200・20・標準・500ｍ）。常時４名の警備員が待機しており、１名は防犯カメラの監視を行っている。この端末からは各階の扉やエレベーターの制御も行うことができる。
襲撃を受けた場合、アラサカ・タワーへの直結回線を利用して応援を要請する。この回線は通常のネットワークに繋がっておらず、ネットランでは妨害できない。警報が発せられた場合、１Ｄ６＋２分後に、それぞれ８名ずつの兵士を乗せたＡＶ−４が３機到着する。
それと同時に、ブースの警備員は端末を利用してエレベータや自動ドアを制御し、ＰＣたちの逃げ道を封じて始末にかかろうとする。
裏にまわると業者用の搬入口があり、クリーニング業者や製薬会社、売店を担当しているケータリング会社などのトラックが出入りしている。
１Ｆの奥には動力室がある。ここの動力を落とせば、病棟のほとんどの機能（エレベータ、自動ドア、内線、防犯カメラ、etc）を麻痺させることができる。ただし、警備ブースのアラサカ直結回線は影響を受けないし、もちろん、ガードマンのもつ通信機は影響を受けない。
★２Ｆ
２Ｆには診察室と病室（すべて個室だ！）がある。常時４〜５名の医師が働いており、ナース・ステーションには同じく４〜５名の看護婦たちがいる。アラサカの“サービス”によって警備員も配置されており、２名の警備員がナースステーション付近にうろついている。
警備員たちは異常を感じたなら内線かヘッドセット通信機を使用して、１階のブースに連絡を取ろうとする。
★３〜５Ｆ
診察室がない他は２Ｆと同様だ。各階にはやはり４〜５名の看護婦と、２名ずつの警備員がいる。
★６Ｆ
この階には病室に加えて医局と医院長室がある。医局には常時５〜６名の医師がおり、医院長が部屋にいる確率は50％だ。この階にいる警備員は４名。
佐竹（頼宣）がいるのはこの階だ。彼の傷はまだ癒えておらず（20ダメージを負っている）ナノテクと医療用ドラッグを注入されて昏睡状態にある。点滴のチューブや医療機器との接続を切るためには、２分の時間と〈応急処置〉15か〈メディカル・テク〉10が必要だ。
無事に病室までたどり着いても、最後の罠が待ち受けている。佐竹（頼宣）に付き添っている美人看護婦は、アラサカのクノイチなのだ！ 彼女は襲撃者に怯えたふりをしながら（必要なら彼女の〈変装〉とＰＣの〈心理学〉で対抗ロールを行え）、すきをみてＰＣを攻撃する。たおやかな外見にだまされれば、10mm弾とサイバー・パンチの強打を食らうことになるだろう。
★屋上
屋上には大きいほうのエレベーターか非常階段を通じて登ることができる。ここにあるのはＡＶ発着上、管制室、貯水タンクなどだ。管制室には２名の管制員（テッキーで、戦力としては考慮に値しない）と、２名のアラサカ・ガードマンが詰めている。
屋上にＡＶ−４がいるかどうかを判定するには、１Ｄ10を振れ。１が出たら少なくとも１機は着床している。さらに１Ｄ10を振り、もう一度１が出たなら、両方のパッドが埋っているということだ。
詳しい内容や配置についてはこのリンクを参照。
データ・フォートレスの外にはアラサカのネット・ガードマンが常駐しているため、コード・ゲートからの侵入は困難をともなう。物理的に内部に侵入し、端末や制御機器の回線から侵入するという手段も考慮に入れるべきであろう。その場合、ネットランナーはフォートレス内の、対応するアイコンの位置に出現する。完全に内部に入らなくても、非常口などのドアの制御回線を利用するという手がある。この場合、回線にバイパスを通すため、「〈エレクトロニクス〉20」に成功する必要がある。１回判定するには５分間の作業が必要で、判定にファンブルすれば警報が作動する。
データ・フォートレスを制することができれば、防犯カメラの制御プログラムを操作して偽の映像を流したり、ドアやエレベーターを制御することもできる。警備ブースの専用回線はアラサカ・タワーに直結しており、ネット・ランでは妨害することができない。
無事に佐竹（頼宣）を脱出させたなら、次は彼を空港まで運ばねばならない。襲撃中に警報が発せられたなら、すでにアラサカ・タワーからＡＶ−４が発進している。そうでなくても、２Ｄ６＋８分後にはタワーの指令部が情報をキャッチする。
ここから先の結果は、ＰＣたちがどのような対策を取ったかという点に大きく左右される。何も対策を講じず、馬鹿正直に車を飛ばしただけなら、最低１回はＡＶ−４の襲撃を受ける羽目になる。たとえ１機とはいえ、ミニガン（ＨＶＹ・±０・Ｎ・難・６Ｄ６＋２ＡＰ（7.62mmＡＰ弾）・2000・100・優秀・500ｍ）を装備したＡＶ−４はかなりの強敵だ。ただし、幸いにしてＡＶ−４のパイロットも頼宣を殺す権限は与えられていない。ＰＣたちが車を降りて分散したりしない限り、ミニガンも威嚇射撃に使用するだけだ。ＡＶ−４は着かず離れず、ＰＣたちの車にまとわりつき、アラサカ・タワーに地上車の出動を要請する。早めに振り切らないと（あるいは撃墜しないと）、３Ｄ６＋１２分以内にはライアット８（『クロームブック』、または『ニッポンソースブック』参照）やコンバット10（『ニッポンソースブック』参照）といった装甲車による道路封鎖にでくわす。
途中で車を乗り換えたり、変装を行ったりといった手段をとれば、無事に逃げおおせられる可能性が高い。ネットランナーが細工をして、偽の情報を流し続けるという手もあるだろう。細かい点については、レフリーがＰＣの計画の有効性（あるいはずさんさ）を考慮して判断を下すこと。
カズミの指示通りに走れば、１時間ほどで郊外の小さな空港に到着する。そこにはシートをかけられた最新鋭のミリテク製ステルス・ジェット機が待っている。空港にはパイロットのほかに、10名ほどの武装した兵士たちがいる。兵装には何のマークもついておらず、所属組織の特定は難しい（実際には、ミリテクのブラック・オペレーション・チームだ）。
ここまで無事にたどり着いたなら、カズミはＰＣたちに後金を払い（現金でもクレッドチップでもお好み次第だ）、佐竹（頼宣）とともにジェット機に乗り込む。ジェット機は数分で発進し、以後、彼女たちの姿がナイトシティで見かけられることはない。
病院で顔を見られたりしていれば、ナイトシティに戻る際に注意が必要になるが、ともあれ、これで今回のアドヴェンチャーは終了する。
頼宣の正体をばらすかどうかは、各レフリーが好みに応じて判断していただきたい。最後までミステリアスな依頼主で通すというのも面白いだろうし、途中で正体をばらしてプレイヤーたちに衝撃を与えるという手法もある。頼宣に対面したカズミが、喜びのあまり本名を叫んでしまう、といった演出もありえるだろう。
今後もアラサカに関する設定を生かして遊びたいというのなら、頼宣が死んでしまうような結末はあまりお勧めできない。実際に起きてしまったのなら、実は替え玉だったとかなんとか理屈をつけてもいいし、おまえの（←傍点）世界では頼宣は死んだ、と割り切ってしまってしまう手もある。
ソルティ・ドッグ
ロール：フリーランス／フィクサー
| ＩＮＴ | ＲＥＦ | ＣＬ | ＬＫ | ＴＥＣ | ＡＴＴ | ＥＭＰ | ＭＡ | ＢＴ | セーヴ | 負傷修正 |
| ８ | ７ | 10 | ４ | ７ | ６ | ９／７ | ５ | ７ | ７ | −２ |
サイバーウェア： バイオテクニカ・リューパフォーム^TM・パッケージ（小規模、顔はボクサー犬）、ニューラル・プロセッサ、嗅覚増強、インターフェイス・プラグ、チップウェア・ソケット、微細視覚強化
技能： 〈裏取引〉７、〈一般教養〉３、〈ギャンブル〉２、〈専門：クラブ経営〉６、〈知覚／観察〉５、〈ボクシング〉５、〈ハンドガン〉６、〈ライフル〉４、〈調理（ＴＥＣ技能）〉５、〈脅迫〉５、〈ファッション〉４、〈心理学〉６、〈説得／口車〉６
チップ： 〈四輪／ホヴァ〉３
装備： フェデレーテッド・454スーパーチーフ・スマートガン、カウンターの下にＦＮ−ＲＡＬ重アサルトライフル・スマートガン
解説： エキゾティックな人体改造を施したホステスが売り物の、クラブ《バニーズ＆バローズ》のオーナー。ヤバイ仕事の仲介やもめごとの調停なども手広くこなしている。
ヘッド（荒坂頼宣）
知名度：７、アメリカでは３
性別：男
ロール：ロッカーボーイ
年齢：25
| ＩＮＴ | ＲＥＦ | ＣＬ | ＬＫ | ＴＥＣ | ＡＴＴ | ＥＭＰ | ＭＡ | ＢＴ | セーヴ | 負傷修正 |
| ９ | ８ | ８ | ６ | ４ | ９ | ８／６ | ７ | ７ | ７ | −２ |
技能、サイバーウェア等については『ニッポンソースブック』を参照（どうせ動けないから関係ないが……）
解説： 荒坂三郎の次男にして、荒坂転覆をたくらむ秘密組織“鋼鉄の龍”のリーダー。数日前ナイトシティで行った作戦の際、重傷を負ってトラウマ・チームの特別病棟に回収された。トラウマ・チームに対しては、佐竹芳雄という偽名で登録されている。
病院から連れ出した段階では、20点（【致命傷１】）のダメージを負っており、ものの役に立たない。ＩＮＴ、ＲＥＦ、ＣＬの各能力値は通常の1/3。ＲＥＦにいたってはスピード・ヒールの副作用でさらに２点下がっている。適切な医療措置をとれば、逃亡しながらでも１日３点ずつ回復するので、３日もあれば【重体】まで回復する。もっとも、まだ足手まといには違いないのだが。
カズミ（和美・ローブレイス ）
知名度：４、アメリカでは１
性別：女
ロール：ズーマーギャング／ソロ（サイバーソルジャー）
年齢：23
| ＩＮＴ | ＲＥＦ | ＣＬ | ＬＫ | ＴＥＣ | ＡＴＴ | ＥＭＰ | ＭＡ | ＢＴ | セーヴ | 負傷修正 |
| ８ | 11 | 10 | ４ | ７ | ９ | ９／６ | 12 | ８（10／11） | 10 | −４ |
サイバーウェア：
筋骨紡織、皮膚編繊ＳＰ８、毒素固定体、極微縫合体、ライフセーヴァ、対疫病ナノテク、移動力強化、筋力強化、反射神経増強＋１*、感覚増強**（ローライト、望遠、ヒアリング・アンプ、可聴域拡大、嗅覚増強）、微細視覚強化
*ナノテクによってＲＥＦが上昇する。ニューラルウェアの反射神経増強とは組みあわせられない。
**ナノテクによる感覚の強化。同じ名前の視覚／聴覚オプションと同様の効果がある。
技能： 〈ギャング・ランク〉７、〈コンバット・センス〉９、〈一般教養〉２、〈隠身／消跡〉２、〈日本語〉８、〈英語〉５、〈ストリートスラング〉２、〈知覚／観察〉６、〈尾行／追跡〉２、〈野外サバイバル〉１、〈運動〉３、〈モーターサイクル〉６、〈四輪／ホヴァ〉２、〈大型特車〉２、〈アラサカ＝テ〉10、〈ハンドガン〉９、〈ＳＭＧ〉５、〈ライフル〉７、〈重火器〉５、〈ダンス〉２、〈解錠〉２、〈サイバー・テク〉１、〈電子保安機器〉２、〈爆破〉２、〈武器構造〉２、〈ベーシック・テク〉１、〈水泳〉１、〈耐久〉１
所持品： 200,000eb分のクレッド・チップ、デルタ・モーターズ・バミューダ、ナイロン・ヘルメット、ケヴレザー・ジャケット（ＳＰ16）、アーマー・ジーンズ（ＳＰ16）、ウェッソン・アームズＭ40・ＥＡＥ・コンペンセータ付*、レーザー・サイト、ヒップ・スピードホルスター（右腰）、スピード・ローダー×３、.357Maximum／ＥＡＥ／ＤＰ弾×50、ケンダチ・モノナイフ、フラッシュバン・グレネード×２、破裂グレネード×２、マストイド・コム、バックパック、セルラーホン、コード解析機、ストリップワイア・バインダ、救急箱、ブースト・カクテル×２、ライフセーヴァ用カクテル×１、キブル×５
*ウェッソン・アームズＭ40：Ｐ ＋１ Ｊ 普 ３Ｄ６＋３（.357Maximum） ６ ２ 50ｍ 213eb。.357Magnumのカートリッジを延長した.357Maximumという弾薬を発射するリヴォルヴァー。シリンダーが長いだけなので、.357Magnumや、.38Specialを発射することもできる。カズミが持っているのはこれをＥＡＥ化したもので、ダメージ：５Ｄ６＋２、射程：75ｍ。コンペンセータによって射率は３に上昇している。
解説： 頼宣の腹心の部下の一人で、今回の渡米作戦の唯一の生き残り。ジーンズの上に黒いジャケットをまとい、黒のヘルメットからはみ出した栗色の髪は、肩の下10cmほどで切りそろえている。
もともとはアラサカのエリート・サイバーソルジャーにして、軌道バイオウェアの実験体だったが、とある作戦の途中、偶然サブローの真の目的を記したファイルを目にしてしまい、口封じのために抹殺されそうになった。ブラック・オペレーション・チームから必死で逃亡しているところを、頼宣たちに救われ、以来“鋼鉄の龍”の戦士の一人となったのだ。
常に冷静で、“プロフェッショナル”としてのスタイルを崩そうとしない。決して表に出そうとはしないが、頼宣にひそかな恋心をよせており、助け出すためであれば、自分の命をも捨てる覚悟だ。
アラサカのガードマン／兵士
ロール：コーポレート／ソロ
| ＩＮＴ | ＲＥＦ | ＣＬ | ＬＫ | ＴＥＣ | ＡＴＴ | ＥＭＰ | ＭＡ | ＢＴ | セーヴ | 負傷修正 |
| ６ | ８／７ | ８ | ５ | ５ | ６ | ７／５ | ７ | ８ | ８ | −３ |
サイバーウェア： ニューラル・プロセッサ、スマートガン・リンク、インターフェイス・プラグ、チップウェア・ソケット、視覚（右眼：ターゲッティング・スコープ、ローライト、対閃光防護）
技能： 〈支援要求〉１、〈コンバット・センス〉５、〈日本語〉８、〈英語〉５、〈ストリートスラング〉２、〈専門：保安行動〉４、〈専門：病院の警備〉４、〈知覚／観察〉５、〈運動〉３、〈アラサカ＝テ〉４、〈ハンドガン〉４、〈ＳＭＧ〉５、〈ライフル〉４、〈忍び〉４、〈電子保安機器〉３、〈応急手当〉３
チップ： 〈四輪／ホヴァ〉３
装備： ヘルメット、中アーマージャケット（ＳＰ18）、アーマートラウザー（ＳＰ10）、トラウマ・カード、ミニライト、モノナイフ、ヘッドセット通信機、身分証、手錠、アラサカＷＡＡアサルト・ライフル（ＲＩＦ・＋１・Ｎ・普・５Ｄ６（5.56mm）・30・30・優秀・400ｍ 標準でスマートガン仕様）、5.56mmＡＰ弾がつまったＷＡＡ用マガジン×４、アラサカＷＳＡピストル・スマートガン、10mmＡＰ弾がつまったＷＳＡ用マガジン×４、低インピーダンス・ケーブル×２
解説： 病院を警備している黒服の兄ちゃんたちだ。アラサカの“サービス”で増員されており、装備も通常より強化されている。ＡＶ−４で到着する兵士たちも同じデータを使用すること。
アラサカのネット・ガードマン
ロール：コーポレート／ネットランナー
| ＩＮＴ | ＲＥＦ | ＣＬ | ＬＫ | ＴＥＣ | ＡＴＴ | ＥＭＰ | ＭＡ | ＢＴ | セーヴ | 負傷修正 |
| ８ | ７ | ７ | ６ | ８ | ６ | ６／５ | ６ | ７ | ７ | −１ |
サイバーウェア： ニューラル・プロセッサ、サイバーモデム・リンク、スマートガン・リンク、ヴィークル・リンク、マシン／テク・リンク、インターフェイス・プラグ、チップウェア・ソケット
技能： 〈支援要求〉２、〈インターフェイス〉４、〈一般教養〉４、〈英語〉８、〈ストリートスラング〉２、〈司書〉３、〈システム構造〉６、〈数学〉３、〈創作〉２、〈プログラム〉６、〈知覚／観察〉４、〈運動〉３、〈ハンドガン〉３、〈裏情報〉２、〈エレクトロニクス〉３、〈サイバーデッキ・デザイン〉６、〈サイバー・テク〉２、〈電子保安機器〉３、〈ベーシック・テク〉６
装備： サイバーデッキ（ＳＰＤ：＋２、20ＭＵ、データウォール：４）
プログラム： ピットブル、シーヤ、ヒドゥン・ヴァーチュー、インヴィジビリティー、フォース・シールド、キラー